調和が破壊される瞬間

星野 智幸
執筆者:星野 智幸 2013年8月27日
カテゴリ: スポーツ 国際
エリア: ヨーロッパ

 その伝説の「スーパーゴール」はまったく予期しない瞬間に飛び出した。横浜F・マリノスのキーパー榎本哲也が、自チームの選手が負傷したため、ボールをタッチラインの中央あたりへ大きく蹴り出す。ボールの向かう先には、相手チーム、名古屋グランパスのベンチがあった。突如ベンチから飛び出した監督のストイコビッチは、スーツに革靴という姿ながら、飛んできたボールを地面に落とさず、ボレーで大きく蹴り返す。巨大な弧を描いたボールは、50メートル先のマリノスゴールに急下降し、ワンバウンドしてゴール! ガッツポーズをしたストイコビッチは、審判から退席を命ぜられた。【リンク

 YouTubeを通じて世界でも有名になった2009年シーズンJリーグの、「ピクシー革靴ゴール」である。試合後の選手のコメントを見ても、マリノスの選手たちまでが、何かとてつもないものを見てしまったという興奮を隠していない。半分冗談とはいえ、Jリーグ20年のベストゴールに推す人もたくさんいるほど、強烈なインパクトを与えた事件だった。

 

ベッカムの「やんちゃ」

 デビッド・ベッカムも、似たような事件を起こしている。2012年のアメリカ・メジャーリーグ・サッカーで、敵チームの選手が時間稼ぎのために痛がって転がっていたところ、タッチラインからスローインをしようとしていたベッカムは、そのボールをふわりと蹴り上げた。ボールは20メートルほど先で転がっているその選手に見事に当たった。激昂した選手はすぐに立ち上がってベッカムの元へ詰め寄った。負傷は嘘だったことが、ベッカムの「やんちゃ」のおかげで観客の目にははっきりしたのである。むろん、ベッカムはイエローカードを食らった。【リンク

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執筆者プロフィール
星野 智幸
星野 智幸 作家。1965年ロサンゼルス生れ。早稲田大学第一文学部を卒業後、新聞記者をへて、メキシコに留学。1997年『最後の吐息』(文藝賞)でデビュー。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、2003年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、2011年『俺俺』で大江健三郎賞を受賞。著書に『ロンリー・ハーツ・キラー』『アルカロイド・ラヴァーズ』『水族』『無間道』などがある。
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