オバマの後戻りは米中東覇権の希薄化を促進する

池内恵
執筆者:池内恵 2013年9月1日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東 北米

 われわれは米国の中東における覇権の終焉の足取りを、一歩一歩見守っているのかもしれない。オバマ大統領は8月31日のホワイトハウスでの会見で、シリア攻撃をするべきと判断したとしつつ、議会での承認を求めたのである。これによってシリア攻撃開始への判断は9月9日の米議会の再開まで持ち越されることになった【発言全文】。

 議会の決定は予断を許さないが、否決される可能性も大いにあるという。ここでオバマ大統領が、議会の否決に従ってシリア攻撃を取り下げれば、米国の中東における覇権の希薄化を強く印象付けることは間違いない。

 シリアへの介入に極めて消極的で、半ば言い訳のように化学兵器の使用を「レッドライン」としてきたオバマ大統領は、8月21日に大規模な化学兵器の使用が疑われる事態が生じるに至って、ついにシリアへの直接的な軍事介入を決断したと見られてきた。行われる攻撃が「限定的」であり「政権転覆」を目指していないことを入念に強調し、丁寧にリークするオバマ政権の姿勢から、シリアの内戦状況を決定的に変えるものではないと予想されていた。しかし攻撃によってアサド政権を「罰する」ことは、「米大統領の信頼性」を守るために最低限必要なものと見られてきた。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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