オバマの後戻りは米中東覇権の希薄化を促進する

 われわれは米国の中東における覇権の終焉の足取りを、一歩一歩見守っているのかもしれない。オバマ大統領は8月31日のホワイトハウスでの会見で、シリア攻撃をするべきと判断したとしつつ、議会での承認を求めたのである。これによってシリア攻撃開始への判断は9月9日の米議会の再開まで持ち越されることになった【発言全文】。

 議会の決定は予断を許さないが、否決される可能性も大いにあるという。ここでオバマ大統領が、議会の否決に従ってシリア攻撃を取り下げれば、米国の中東における覇権の希薄化を強く印象付けることは間違いない。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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