将棋ソフトの扱いに見る「日本のこれからの姿」

執筆者:梅田望夫 2005年8月号
カテゴリ: IT・メディア

 将棋ソフトが年を追うごとに強くなっている。現代最強ソフトは「激指」(独立行政法人研究員・鶴岡慶雅氏らの作品)で、アマチュア初段程度の棋力の私では全く勝てないレベルにある。そして情報技術(IT)の進展とともに、将棋ソフトがさらに強くなっていく方向は確実で、いずれはプロ棋士と雌雄を決さざるを得ないことになる。 チェスの世界では、人間の世界チャンピオン・カスパロフが、一九九七年に米IBM製スーパーコンピュータ「ディープブルー」に初めて敗れた。将棋はチェスに比べてルールが複雑なので、チェスほど早く人間の最高峰にまで到達できず、「激指」もようやくアマチュアのトップクラスと肩を並べるようになったところである。 しかしここで注目すべきは、チェス最強ソフトを作るためにはIBMという巨大組織の資本が必要であるという考え方は、九〇年代までの古い感覚だということなのだ。これからは「最強ソフトを作る」という表現機会は、「チープ革命」のおかげで不特定多数無限大の個人に開かれ、鶴岡さんのような在野の個人による競争によって、「最強ソフト」という表現結果が切磋琢磨されていく。こういうことが、社会の到るところで起きてくるのが「次の十年」のイメージ。六月号巻頭の「ウェブ社会『本当の大変化』はこれから始まる」で詳述した「総表現社会」の一つの発露なのである。

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執筆者プロフィール
梅田望夫 1960年東京都生れ。94年渡米、97年コンサルティング会社ミューズ・アソシエイツを起業。著書に『ウェブ進化論』(ちくま新書)、『ウェブ時代をゆく』(同)、『ウェブ時代 5つの定理』(文藝春秋)、『ウェブ人間論』(共著、新潮新書)など。メジャーリーグの野球、そして将棋の熱烈なファン。
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