ラブロフ提案は米ロによる「シリア内戦国際管理」につながるか──シリア問題への熟考(3)

池内恵
執筆者:池内恵 2013年9月10日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: ロシア 中東 北米

 シリアをめぐる水面下の米ロ外交が表面化している。9月9日、ロシアのラブロフ外相は突如記者会見し、シリアに化学兵器を国際管理下に置くように求める提案発表した。

 訪ロしていたシリアのムアッレム外相は、この提案を歓迎する、と記者に答えている。「歓迎」がアサド政権としてのものなのか、そもそもラブロフ提案の策定にアサド政権がどこまで関与していたかも定かではない。

 そしてオバマ大統領は9日のテレビ各局へのインタビューでこの動きを評価し、もし化学兵器を差し出せば攻撃を控えると言明している。オバマ大統領が10日の米国民向け演説で、攻撃への決意と、外交解決の可能性との関係をどのように表現するかが注目される。

 米議会の採決も先送りされそうな様子であり、15日に行われる国連調査団の報告を待つとするフランスの姿勢もあり、攻撃開始はしばらく回避されそうだ。

 ラブロフ提案は、この日、ケリー米国務長官がイギリスでヘイグ外相との会談後の記者会見で、記者の質問に答えた発言に敏感に反応した形だった。問題となるケリー国務長官の発言は、「アサド政権は何をすれば米国の攻撃を避けられるのか?」という記者の質問に対して、次のようにかなり大雑把に答えたものだ。「アサドが来週、全ての化学兵器を国際社会に差し出すことだ。全部を、遅れることなく、差し出せ。そしてそれを完全・全面的に検証するのだ。だが彼はそんなことはしないだろうが。そんなことはできっこない(He could turn over every single bit of his chemical weapons to the international community in the next week. Turn it over, all of it, without delay, and allow a full and total accounting for that. But he isn’t about to do it, and it can’t be done, obviously.)」

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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