若者を「反日」に駆り立てるもうひとつの真相

執筆者:藤田洋毅 2005年8月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾

たまりにたまった社会の矛盾が、近い将来に爆発する可能性がある。その主役は、「憤青」と呼ばれる若者たちかもしれない。「中国が直面する最大の矛盾はなんでしょうか」――筆者はこの四、五年、同じ問いを投げ続けてきた。 党中央のある高官は「幹部の全面的な腐敗、そして共産党の統治能力を支える基層組織の崩壊だ」と答え、社会科学院の専門家は「三農(農業・農村・農民)問題こそが焦眉の急」と強調した。別の研究者は「国有企業改革、ことに古い重工業地帯である東北地区の再生だ」と訴えた。いずれも“局部の矛盾”である。 一風変わった答は、ある大学院教授の口から飛び出した。「心態不平衡」すなわち「精神の均衡が取れない。十三億人民の心がバランスを失い、大陸全土が苛立っているかのようだ」というのである。 社会主義中国の主人公である労働者は、国有企業改革の煽りでリストラ・ラッシュに遭い、多くが最低生活保障制度に頼る生活。いまや都市部の実質的な失業率は一三―一四%に上るとの推計もあるほどだ。もう一方の主人公の農民は、さらに悲惨。土地収用をめぐり相変わらず地方の腐敗官僚の食い物になり、都市へ出稼ぎに出ても賃金カットや不払いが蔓延する。都市部における労働争議が集団化・大規模化し、農民の一揆・暴動が相次いでいるわけだ。

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