軍配は首相ではなくロビー活動に――インテリジェンスで解く東京五輪招致成功

春名幹男
執筆者:春名幹男 2013年9月11日
カテゴリ: スポーツ 国際 社会

「あきれた」「ふざけんじゃない」地元福島の漁業者からはそんな声も出たという。

 東京五輪招致を決めた国際オリンピック委員会(IOC)総会での安倍晋三首相のプレゼンテーションのことである。

「状況はコントロールされている」

「汚染水の影響は福島第一原発港湾の0.3平方キロ」

 安倍首相はそう発言したのだが、正確な表現でないことは誰の目にも明らかだった。安倍首相の出発前、そして帰国後も新しい問題が明るみに出ており、状況は決してコントロールなどできてはいないのだ。汚染水は山側の地下水でも検出されているし、港湾の外の太平洋にも漏れていて、「ブロックされている」なんて決して言えない。

 ただ現地では、首相のこうした言葉が、投票を前にしたIOC委員たちの最終的判断に影響を与えたことは否定できない。

   しかし、実は日本に投票したIOC委員たちは、総会開催前から既に東京への投票を決めていた。そのことは、竹田恆和東京招致委員会理事長がNHKテレビのインタビューで明らかにした事前の票読みが極めて正確だったことから裏付けられる。同理事長によると、第1回投票では40-45票、決選投票では60票程度と予測していたが、結果はそれぞれ42、60だった。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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