菅直人元首相が台湾で反原発をアピールしたが……

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2013年9月18日
カテゴリ: 外交・安全保障 政治
エリア: 中国・台湾

 台湾では反原発運動が活発で、安全性について疑念を持たれている第4原発を稼働させるか否か年内の住民投票が想定されている。馬英九政権を中心とする推進派と、民間団体や学生、野党の民進党などを中心とする反対派との間で意見が真っ二つに割れ、日本以上に原発をめぐる社会の亀裂が深まっている。

 そんな台湾に、先週、反原発グループから招待を受けた菅直人元首相が現れた。滞在中には、稼働中の第1原発を訪問、講演も行ない、メディアの取材を受けた。

 菅氏は帰国後、台湾訪問の状況を報告し、「連日新聞やテレビが大きく報道してくれた」と語っているが、当時台湾にいた私の理解では、台湾では馬英九・王金平の政争のまっただ中で、全体として菅氏の発言は『大きく』はフォローされていなかったはずである。反原発の立場を鮮明にしている民進党寄りの自由時報だけは、連日比較的大きな紙面を割いて菅氏の記事を載せていた。

 興味深かったのは、菅氏が反対運動に参加している人気俳優に向かって「仕事を干されることはないか」と聞いたところ、「それはない」と言われた。これに対し、菅氏は「日本より民主的で自由な社会の雰囲気を感じた」と感想を述べている。

 これは正しい観察で、東電に批判的な発言をしただけで芸能界を干されてしまうということが広く信じられている日本の異常さに比べて、台湾で台湾電力がもしそんなことをしたら社会から袋だたきにあってしまうことは間違いなく、電力会社批判において一般大衆が不必要な懸念を持たないでいられることに注目したセンスは正しいと思う。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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