国際論壇レビュー
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「シリア問題」で懸念される「国際秩序の漂流」

会田弘継
 化学兵器の使用は世界に衝撃を与えた(C)AFP=時事
化学兵器の使用は世界に衝撃を与えた(C)AFP=時事

 衝撃的な映像に目を背けたくなる【YouTube】。内戦が収まらないシリアの首都ダマスカス近郊で8月21日に起きた化学兵器攻撃により、少なくとも子ども426人を含む1429人が死亡した。米政府は30日、アサド政権による攻撃であると「強い確信」を持つ、と結論づける報告書を公表した。【Government Assessment of the Syrian Government’s Use of Chemical Weapons on August 21, 2013

 さらに衝撃的だったのは、その後のオバマ米大統領の迷走ぶりだ。大統領はかねてから、アサド政権に対し化学兵器使用は「越えてはならない一線(red line)だ」と警告していた。米大統領がこのセリフを使い、相手がその一線を越えたと分かったら、武力攻撃に訴えて、相手を押し戻す。それが、良かれ悪しかれ、米国の「世界の警察官」としての信憑性である。武力行使の最終決断は、大統領1人にかかる。

 ところが、オバマ大統領はまず、その最終決断を議会に預けた。サンクトペテルブルクでの20カ国・地域(G20)首脳会議で武力行使に国際社会の支持が得られず、議会からの支持取り付けも危ういと見ると、なんとアサド政権の後ろ盾だと非難を浴びせかけてきたロシアの助け船にするりと乗った。隠している化学兵器をアサド政権が差し出せば、今回の犯行は大目に見てやろう、というのだ。

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執筆者プロフィール
会田弘継
会田弘継 青山学院大学地球社会共生学部教授、共同通信客員論説委員。1951年生れ。東京外国語大学英米科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。2015年4月より現職。著書に本誌連載をまとめた『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮選書)、『戦争を始めるのは誰か』(講談社現代新書)、訳書にフランシス・フクヤマ『アメリカの終わり』(講談社)などがある。
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