饗宴外交の舞台裏 (92)

サミット開幕を彩ったテロ前夜の晩餐会

 イギリス北部スコットランドの保養地グレンイーグルズのホテルレストランに、バッキンガム宮殿から電話があったのは昨年十一月のことだった。「来年七月の主要国首脳会議(G8サミット)の幕開けにエリザベス女王が歓迎晩餐会を開く。ついてはその料理をお願いしたい」と電話の主は言った。 レストランのオーナーのアンドリュー・フェアリー料理長(四一)はフランスで料理を学び、四年前にレストランをオープンしたばかり。求めに応じて料理長は四種類のメニューを提案し、この中から決まったのが次のメニューである。 スモークサーモンにローストしたラングスティーヌ(手長海老)、サラダ添え

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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