忘れてはいけない国、マレーシアとモーリシャス

平野克己

 中国のアフリカ攻勢が喧しく論じられる一方、アフリカビジネスを進めるにあたり日本では韓国企業との連携が図られ、最近はインドとの協力が言挙げされている。しかし、アジアにはもうひとつ忘れてはいけない国がある。それはマレーシアだ。

 今年3月に国連貿易開発会議(UNCTAD)が出したレポートによれば、対アフリカ投資(FDI)ストックがもっとも多いのはフランスの580億ドルで、これにアメリカ(560億ドル)、イギリス(480億ドル)が続いているのだが、開発途上国のなかではマレーシアがトップで190億ドル、南アフリカ(180億ドル)、中国(160億ドル)、インド(140億ドル)の順になっている。ちなみに、日本の対アフリカFDIストック額は80億ドルである(JETRO調べ)。開発途上国の対外投資が目に見えて増え始めたのは資源高以降で、2012年には世界総額の30%を占めるまでになった。マレーシアは2007年に初めて対外FDIが対内FDIを上回るようになり、以来、純投資国であり続けている珍しい途上国だ。

 1994年に南アフリカ初の民主総選挙が行なわれマンデラ政権がたったあと、最初にやってきたアジアの元首が当時のマレーシア首相、マハティールだった。南アフリカの側でも、アパルトヘイト後にいかなる政治体制を構築するかの参考としてマレーシアのブミプトラ政策が研究されていたから、両国のあいだにはきっと連絡があって、マハティールは民主化直前の南アフリカ情勢を把握していたのだろう。彼は200名のビジネスマンを同道し、民主南アフリカへの進出を奨励した。当時私は南アフリカの大学に派遣されていたので、様子を聞こうと早速、ヨハネスブルグにできたばかりのマレーシア通商代表部を訪ねた。急遽南アフリカに派遣されたらしい担当官は「ボス(マハティールのこと)が決めたことだから……」と、様子の分からないアフリカに放り出されて若干当惑しているように見えた。当初マレーシアは不動産投資から手がけ、たしかこれはうまくいかなかったと記憶しているが、1998年には国営エネルギー会社ペトロナスが南アフリカの石油会社エンゲン(Engen)を買収している。当時エンゲンはアフリカ最大のエネルギー企業で、ペトロナスに買収される前はモービルの傘下にあった。

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執筆者プロフィール
平野克己
平野克己 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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