「難破事故」があぶり出すもう1つの「欧州南北格差」

国末憲人
 イタリアの警備艇に救助されるシリア難民ら (C)AFP=時事
イタリアの警備艇に救助されるシリア難民ら (C)AFP=時事

 イタリア最南端にあたる地中海の孤島ランペドゥーサ島は、やや皮肉を込めて「欧州の門」と呼ばれている。アフリカ大陸から100キロあまりしかなく、欧州にたどり着こうとする不法移民や難民の船が目的地とするからだ。ただ、貧弱な移民船の難破事故は多く、島の周辺での死者はこの4年間で約800人にのぼるという。その教訓も生かせないまま、10月3日に例のない惨事が起きた。約500人といわれる移民を乗せた船の火災転覆事故で、確認された死者は14日現在364人に達した。

 しかも、これ以降も近海では移民船の事故が相次いでいる。1週間あまり後の11日には、シリア人の難民ら数百人を乗せてランペドゥーサ島に向かっていた船がマルタ南方の海域で沈没。15日までに210人が救助されたものの、36人の遺体が確認され、死者・行方不明者が100人を超える恐れも出ている。14日には、主にサハラ砂漠以南出身者137人を乗せた移民船がランペドゥーサ島に漂着した。

 これらの出来事は一方で、欧州域内の南北の格差を浮き彫りにした。南北格差と言っても、欧州債務危機を巡るドイツとギリシャの対立とはやや趣が異なる。今回の対立の原因は、移民が漂着する地中海沿岸諸国と、彼らが最終目的地と考える北部欧州諸国との間の、利害と意識の食い違いである。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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