JR北海道「再生」への遠き道のり

執筆者:曽我部司 2013年10月17日
タグ: 日本
エリア: アジア
 線路幅の補修は、やってみればわずか3日で終わった (C)時事
線路幅の補修は、やってみればわずか3日で終わった (C)時事

 事故の予見について、鉄道事業者は常に最善の注意を払わねばならない。と同時に、安全性を維持するための投資を怠ってはいけない。そんな初歩の教訓は、乗客106人死亡という未曽有の大惨事となった2005年4月の福知山線脱線事故で、全国のJR各社に浸透していたはずだった。

 しかし、JR北海道では、11年5月に石勝線のトンネル内で起きた特急脱線炎上事故以来、不祥事や事故があまりにも頻発している。今年は特急客室内に煙が流れ込んだ事故に始まり、エンジンや配電盤からの出火が4件、軽油による白煙の発生が2件続いた。大雨による土砂流出で函館線の貨物列車が倒木と衝突して脱線したのは8月のことだ。夏休みの繁忙期に列車の運休が続き、道民と観光客の足は乱れ続けた。旅客輸送のみならず、貨物列車の運行の乱れは道外への物流を失速させ、青果物などの市場価格を上げる要因にもなった。道内の貨物の遅れは、生活を脅かすほど深刻なものとなっている。もはや道民のJR北海道に対する評価は、失望から絶望へと変化しつつある。

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執筆者プロフィール
曽我部司(そがべつかさ) ノンフョクション作家。1958年生まれ、札幌在住。2000年に発表した『ホッケー69-チェコと政治とスポーツと』により、第9回開高健賞奨励賞を受賞。03年には、綿密な取材と検証による『北海道警察の冷たい夏-稲葉事件の深層』が、第35回大宅壮一ノンフィクション賞、第57回日本推理作家協会賞の評論その他の部門において最終候補作となった。
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