「架空の原油不足」が真の石油危機を招来する

執筆者:石井彰 2005年10月号
カテゴリ: 環境・エネルギー

米国の精製能力不足と投機取引によって、原油価格は実態以上に高騰している。しかしこのバブルは、将来に深刻な禍根を残しかねない。 ハリケーン「カトリーナ」は米国の石油・天然ガス産業の中心地、メキシコ湾岸に大打撃を与えた。九月十二日現在判明している限りでは、原油生産施設へのダメージは昨年のハリケーン「アイバン」の方が深刻だったというものの、精油所・パイプライン・輸入港など、中下流施設が甚大な被害を受けている。 国際エネルギー機関(IEA)はこれを受け、ガソリンなど石油製品を中心とした六千万バレルの石油備蓄放出を決定した。だが、米国の石油製品逼迫は更に深刻化する可能性が高い。その背景には構造的な精製能力不足がある。一九八〇年代から激しい競争を繰り広げてきた米エネルギー企業は、巨額の設備投資を嫌い、余剰精製能力をぎりぎりまで削ってしまっていたのだ。 米国の精製能力不足は、もともとカトリーナ来襲前から世界の原油価格に影響を及ぼしてきた。一バレル=七〇ドル水準にまで達したグローバルな価格上昇は、「中国、インドの石油需要急増に世界の原油供給能力が追いつかない」といった形で解説されることが多い。しかし、これだけでは真相を捉え切れない。グローバルな原油価格高騰は、むしろ米国の精製能力不足というローカルな要素によるところが大きいからだ。

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