「記者拘束」から見える中国メディア界の病理

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2013年10月30日
カテゴリ: IT・メディア 国際
エリア: 中国・台湾

 中国・広東省の新聞「新快報」の記者が警察に拘束された問題で、拘束された記者が金銭を受け取って偽の報道を行なっていたことを「自白」した。取材権の侵害として、記者の釈放を求めて中国のメディア界が沸騰した一時の盛り上がりからすれば、かなり後味の悪い結末を迎えた。

 当事者の新快報も27日に「記者が他人から金銭を受け取り、大量の虚偽報道をしていた。社会各界に深くおわびする」とする謝罪記事を掲載し、振り上げた拳をあっさりと下ろしてしまった。

 この問題は、恐らくこのまま収束していくに違いない。ただ、今回の問題から、中国メディア界の病理がいくつか見えてくる。

 記者の「自白」が当局による強制・ねつ造ではなかったかという陰謀説があるが、その可能性は低そうに思える。もしも陰謀なら、新華社や記者協会などの「体制側」メディアまでが一斉に批判の声を上げることはなかったはずで、記者を拘束した長沙市の公安当局から彼らが状況を把握するために数日のタイムラグがあったことをうかがわせる。

 また、問題の記者が行なった企業批判のキャンペーンの内容の真偽については、金銭授受を暴露した公式メディアの報道を見る限り、定かではない。現時点では金銭の授受がライバル企業との間に起きたことが明らかにされただけだ。もしも陰謀ならば、当局は「結末」までシナリオを描いていて、公式メディアがその詳細を報じているはずである。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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