【ブックハンティング】先頭を走り続けるスター記者ウッドワードの迷いと葛藤

執筆者:中山俊宏 2005年10月号
カテゴリ: 国際 書評
エリア: 北米

 アメリカ政治の最大の謎の一つであった「ディープ・スロート」の正体が明らかになった。 ウォーターゲート事件当時、まだ駆け出しの新聞記者だったワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワードに地下駐車場で情報を提供していたのは、W・マーク・フェルトFBI(米連邦捜査局)副長官(当時)であったことを九十一歳の本人が明らかにし、ウッドワード自身もこれを確認した。 フェルトとウッドワードとの出会い、ウォーターゲート事件におけるフェルトの役割、その後の二人の関係を綴ったのが、ボブ・ウッドワード著“The Secret Man”である。 九十歳を越えたフェルトはもはや当時の記憶はほとんどないという。ウッドワードについても、かろうじて当時知り合いであったことを覚えているのみのようだ。従って、我々はディープ・スロート本人の口から、ウォーターゲート事件についての話を聞くことは出来ない。晩年を迎えたフェルトがなぜこの時期に公表を決意したのかをめぐっては、様々な憶測が飛び交っている。今回の公表は、これまで頑なに沈黙を守ってきたフェルト自身の熟慮の末の決断というよりも、同居する家族の判断という色彩が強そうだ。 本書は、一九七〇年前後のホワイトハウスでのフェルトとウッドワードとの偶然の出会い、その後の二人の奇妙な関係を興味深く綴っている。

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執筆者プロフィール
中山俊宏 1967年生れ。国際政治学博士(青山学院大学)。日本政府国連代表部専門調査員、日本国際問題研究所主任研究員、津田塾大学国際関係学科准教授を経て、現職。共著に『アメリカ現代政治の構図』(東京大学出版会)、『アメリカのグローバル戦略とイスラーム世界』(明石書店)などがある。
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