ナノテクに復権を賭ける繊維 2 染めなくても「神秘の蝶」のように輝く糸

執筆者:船木春仁 2005年10月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

 原稿を書こうとして取材ノートを開くと、ノートに挟まっていた一本の糸がデスクスタンドの光を受けて青く光った。つまんで改めて見ると、コバルトブルーの透き通るような青さとメタリックな光沢を放つ。帝人のグループ会社で衣料繊維部門を担う帝人ファイバーを取材したときに見せてもらった「モルフォテックス」がこぼれていたのだ。 この糸は、一二本の単糸をよったものだ。単糸の断面を顕微鏡写真で見ると、縦が一五―一七ミクロンメートル(一ミクロンは一〇〇〇分の一ミリ)、横が四〇数ミクロンのラグビーボールを押しつぶしたような扁平形で、その中に、縦五ミクロン弱、横三〇ミクロンほどの長方形の別の構造があるのが分かる。顕微鏡の倍率を上げると、長方形の構造物は、ナイロンとポリエステルが交互に積層されたものであり、六一層あるのを確認できる。つまり一つの層の厚さが七六ナノメートル(一ナノは一〇〇万分の一ミリ)のサンドイッチの重なりだ。 理科のテストのようだが、孔雀の羽、シャボン玉、玉虫の翅、熱帯魚のネオンテトラ、ホタルイカなどに共通するものは何だろうか。いずれも美しく輝くものである。しかし、実はこれらはみな、色素によって輝いているのではなく、体の表面にあるミクロンレベルの微細な構造が光の干渉や錯乱を起こし、あたかも発色しているかのように見せているところに共通点がある。この機能は、構造発色と呼ばれる。

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