ブックハンティング・クラシックス
ブックハンティング・クラシックス(9)

生命と遺伝の“鍵”を見出した寛大さ、確信、情熱、そして出会い

執筆者:向井万起男 2005年10月号
カテゴリ: 書評

『二重らせん』The Double Helixジェームス・D・ワトソン著/江上不二夫・中村桂子訳講談社文庫 1986年刊 一九六二年のノーベル賞。これは、百年以上の歴史を誇るノーベル賞の中でもダントツに面白い。この年の受賞者達のことを考えると、神様が悪戯をしたとしか思えないのだ。六年後の一九六八年に出版された或る一冊の本を読むと、そう思わずにはいられなくなる。受賞者八人のうち六人が実名で登場する本だ。しかも、受賞者の一人が自ら書いた本。 ところで、その本に登場しない受賞者二人のうち一人が文学賞受賞のジョン・スタインベック。私は高校生の時、『怒りの葡萄』を読んでスタインベックのファンになった。そして、スタインベックについて書かれた本も読み漁っているうちに一九六二年のノーベル賞授賞式の写真に行き当たったのだが、その写真を見た瞬間、私は“ナンダ?”と思った。受賞者達が並んでいる写真の中に、ヤケに若くて痩せこけた青年が一人混じっているのだ。若き日のフランク・シナトラを思わせるような風貌で、ノーベル賞には不釣り合いとしか思えない。名前はジェームス・ワトソン。私はワトソンについて何も知らなかった。

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