「江沢民国際手配」スペイン司法当局の意図は何か

国末憲人
執筆者:国末憲人 2013年11月21日

 自国とは異なる国で起きた犯罪をあえて訴追する「普遍的管轄権」を、以前フォーサイトで紹介したことがある(2013年10月21日「国家に縛られず犯罪を裁く『普遍的管轄権』とは――マドリードを訪ねて」)。

 通常の裁判管轄権は国境に縛られるが、国際秩序を揺るがす恐れのあるジェノサイド(大虐殺)や「人道に対する罪」の場合、独裁者や国家機関が罪を免れないためにも、当事国以外の国が罪を問える、との考え方である。1990年代後半から2000年代にかけてスペインの予審判事バルタサル・ガルソン氏がこの制度を利用し、チリの独裁者ピノチェト元大統領やアルゼンチンの独裁政権幹部を次々と訴追して、大きな反響を呼んだ。

 しかし、訴追のたびにわき起こる当事国からの猛反発に手を焼いたスペイン政府は、根拠となってきた司法権組織法を2009年に改正し、司法当局の権限を縮小。起きた国や関係者の国籍にかかわらず訴追する権限を司法当局に与えていた制度を改め、訴追の範囲を「スペイン国民が被害者となるか、被告人が国内にいる場合」などと限定した。ガルソン予審判事も2010年に解任され、多くの人が「スペインの普遍的管轄権は死んだ」と受け止めていた。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
comment:1
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順