行き先のない旅
行き先のない旅(96)

EUが試みる「お年寄り」との「ウィン・ウィン」の関係

大野ゆり子
執筆者:大野ゆり子 2013年11月26日
カテゴリ: 国際 文化・歴史 社会
エリア: ヨーロッパ

「60歳以下お断り」――。こんな見出しが昨年、フランスのパリ、リヨン、マルセイユのタウン情報サイトに出された。

「どうしていつも、マヨネーズ作りに失敗するのかしら? 自分が編み物をすると、どうして帽子がソックスみたいになるの? ――あなたや私にはわからないことが、人生を長く生きてきたお年寄りにはわかります。彼らのノウハウを、大募集します。世界旅行をしたおじいちゃん、6人も愛人を持ちながら7人の子供を育て上げた大叔母さん、投資がうまい伯父さん、チョコレートケーキが上手なお隣さんなど、どんな人材も大募集。専門分野と写真を編集部まで送ってください」

 

豊富な経験を持つ「人材」

 リヨン市が今年10月の「アクティブ・エイジング週間」に作ったポスター(筆者撮影)
リヨン市が今年10月の「アクティブ・エイジング週間」に作ったポスター(筆者撮影)

 この記事には、最新モードに身を包む老婦人、楽しそうな老カップル、ゲームに興じるおじいさんなど、「今」を謳歌しているお年寄りの写真がついている【リンク】。

 美しいイラストに彩られたこのサイトは、新しくオープンしたカフェや美容など、流行に敏感な若い女性に向けた情報を普段は載せている。一見、高齢者問題と関係のないサイトに載せられた募集広告は、お年寄りを社会の「弱者」ではなく、豊富な経験を持つ「人材」としてポジティブに捉えようという、ヨーロッパで進められている意識変革の「流行の最先端」を表しているともいえる。

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執筆者プロフィール
大野ゆり子
大野ゆり子 エッセイスト。上智大学卒業。独カールスルーエ大学で修士号取得(美術史、ドイツ現代史)。読売新聞記者、新潮社編集者として「フォーサイト」創刊に立ち会ったのち、指揮者大野和士氏と結婚。クロアチア、イタリア、ドイツ、ベルギー、フランスの各国で生活し、現在、ブリュッセルとバルセロナに拠点を置く。
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