巨星堕つ:ネルソン・マンデラ死去

執筆者:平野克己 2013年12月6日
エリア: アフリカ

 ネルソン・マンデラ氏がついに逝った。マンデラはアフリカ政治史における最大の英雄であり、アフリカ人にかぎらず世界中の人々からもっとも尊敬され、愛されたアフリカ人政治家である。彼が南アフリカ、そしてアフリカに残した足跡は巨大で、その貢献は計り知れない。20世紀の終わりに際して自由と民主主義をもっとも強力に推し進めた政治家は、アフリカ人のマンデラだったのである。

 マンデラは1918年7月生まれ、享年95歳であった。植民地時代唯一の黒人大学だったフォートヘア大学在学中に、のちのアフリカ民族会議(ANC)総裁オリバー・タンボに出会い、政治運動に入った。その後ヨハネスブルグに移りウォルター・シスルにも出会っている。シスルはANC事務局長として民主化にいたる路線を敷いた人物だ。
 マンデラはこういった先達たちに可愛がられ、その教えを素直に吸収して、いわば“古典的”な正統自由主義者として思想的に完成していった。マンデラ自身の思想陶冶期は、ANCが非人種自由主義とアフリカ民族主義の相克を経験し最終的に前者を選択する、組織思想の形成期でもあった。マンデラはヨハネスブルグにあるウィットウォータースランド大学で法律を学んだのち弁護士試験に合格して、タンボと一緒に、黒人のための初の法律事務所を開いた。ここから彼の大活躍が始まる。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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