ナノテクに復権を賭ける繊維 4 「合繊クラスター」の北陸に日はまた昇るか(上)

執筆者:船木春仁 2005年12月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

 一九六〇年代の毎春、福井県内の繊維会社に就職するために一〇〇〇人もの中学卒業者が国鉄北陸本線福井駅に降り立った、という。 かつて福井県内には綿や合成繊維を織ったり編んだりして生地を作る「機屋」が三一〇〇あった。八四年には史上最高の九億六四〇〇万平方メートルの織物(編物も含む。以下同)を生産し、福井県は世界の織物産業の頂点に立つ。石川、富山を含めた北陸三県で、日本の合成繊維織物輸出の九割を占めた。 しかし九〇年代に入ると、中国の廉価な労働力を背景とする織物増産に押され、この一五年間で機屋は四〇〇にまで減り、生産高も半分以下の四億平方メートルにすぎない。繊維工業の従業員は、三万人から一万二〇〇〇人にまで減った。 いま、福井駅周辺では過去の歴史を捨て、新たな時代をめざすかのように再開発が進んでいる。多くの集団就職者を迎えた福井駅は、名勝東尋坊の地層をイメージしたというガラス張りの突起が並ぶ、まるでITの研究所を思わせる駅舎に変わった。そして北陸三県の繊維産業もまた、生まれ変わりのために、“最初で最後の構造改革”に取り組んでいる。取り残された「川中」の強化へ 繊維産業、特に織物や染色は、一九五六年に制定された「繊維工業設備臨時措置法」以来、個別業法のもとで過剰設備の買い上げなどの手厚い保護を受けてきた。だが、九九年に法律は廃止され、さらに経済産業省が二〇〇三年にまとめた繊維ビジョンは、「今後五年間は最後の改革期間であり、この間に構造改革を本格的かつ集中的に行なうことが必須で、これが最後の施策となることを覚悟すべきだ」と厳しく指摘した。

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