Jリーグが仕掛ける「アジアの時代」

星野 智幸
執筆者:星野 智幸 2013年12月26日

 今年の7月、J2のコンサドーレ札幌にベトナムの英雄、レ・コン・ビンが加入したとき、私は興奮に震えた。レ・コン・ビンという選手を知っていたからではなく、この移籍がサッカーのアジア時代の幕開けとなるかもしれないからだ。

 レ・コン・ビンはチームになじむまでにしばらくかかったものの、シーズン末期にはその能力を発揮し始め、2得点を記録、コンサドーレのサポーターからの信頼も獲得した。

 そして、それ以上に盛り上がっていたのが、ベトナム国内である。レ・コン・ビンの一挙手一投足をベトナムメディアは追い、J2の試合も国内で放送されるようになったという。

 拙作の話で恐縮だが、私は2002年に書いた中編小説「ファンタジスタ」で、日本、韓国、中国のプロリーグが統合されたAリーグ(アジア・リーグ)が活況を呈している世界を描いた。その時に夢想したのが、アジアのリーグが自前で有能な選手を育て、地域全体が欧州に次ぐサッカー市場と化している姿である。小説内では、「ウラワ・レッヅ」というチームが、世界クラブ選手権で優勝している。

 そんな空想が、東アジアではないけれど、日本と東南アジアを舞台として実現するかもしれない。レ・コン・ビンの移籍は、そう思わせる出来事なのである。

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執筆者プロフィール
星野 智幸
星野 智幸 作家。1965年ロサンゼルス生れ。早稲田大学第一文学部を卒業後、新聞記者をへて、メキシコに留学。1997年『最後の吐息』(文藝賞)でデビュー。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、2003年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、2011年『俺俺』で大江健三郎賞を受賞。著書に『ロンリー・ハーツ・キラー』『アルカロイド・ラヴァーズ』『水族』『無間道』などがある。
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