80時間世界一周
80時間世界一周(16)

ラマダンでも「飽食」の巷と対照的な宗教学校の内側

竹田いさみ
執筆者:竹田いさみ 2005年12月号
カテゴリ: 国際

 ドーン、ドーン――時計の針が午後六時に差しかかるとき、レストランの前に置かれた太鼓を思いっきり打つ音が、静まり返ったホテルのロビーに鳴り響く。こうした光景は一カ月も続く。ここはインドネシアの首都ジャカルタにあるホテル日航。ここだけでなく、いずれのホテルもレストランの前に太鼓が置いてある。地方都市でも同じだ。太鼓を合図に、レストランを埋め尽くした客たちは、一斉にご馳走が並ぶビュッフェ・カウンターに殺到する。暖かいスープを飲み干し、照焼きチキンや蒸した車えびで山盛りの皿をテーブルに運び、食の祭典が始まる。子供たちは早食い競争。イスラム教徒にとって聖なる断食月、ラマダン風景の一コマだ。 今年のラマダンは十月五日から始まり、一カ月続いた。ラマダンとは太陰暦(ヒジュラ暦)の第九番目の月名で、イスラム聖職者が肉眼で新月を確認して、ラマダンの月が始まるとされる。クリスマスと異なり、ラマダン月や中国の旧正月は毎年変わるため、カレンダーには記載されない。スケジュールを立てるときは要注意だ。 ラマダン月はイスラム教徒にとっては神聖な月で、日の出から日没まで飲食が禁止され、あらゆる人間の欲望が抑制される。厳格な戒律に従えば、つばを飲み込むことさえ禁止されている。戒律遵守という点で、サウジアラビアは最も厳格だが、東南アジアのイスラム教徒は寛容だ。ただ、そうはいっても、公衆の面前では最低限の戒律を守らなければならない。それは飲食をしないということだ。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ
竹田いさみ 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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