いつの間にか、自民党内の考え方もガラリと変わっていた。新たな政界構図のなかで、改憲はどう論議されていくのか。「今日の憲法は一番大事なところを外しておる。だから私は怒った。あれは『第一次』草案で、いずれ『第二次』草案を作らないといけないんです」 十一月二十二日、東京・品川の新高輪プリンスホテル。自由民主党立党五十年を記念する党大会で、新憲法起草委員長を務めた森喜朗前首相が誇らしげに新憲法草案を読み上げた。立党五十年にして、初めての快挙。ところが、それを聞く改憲の大御所、中曽根康弘元首相の表情は深く曇っていた。同氏は早々に会場を後にし、その足で都内の別のホテルで開かれた憲法問題のシンポジウムに出席し、冒頭の痛烈な草案批判を吐き出した。
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