アメリカが中露に打ち込む「モンゴル」という楔

執筆者:河島一晴 2006年1月号
カテゴリ: 国際 金融

中央アジア諸国を糾合する中露に対し、アメリカはモンゴルをNATOパートナーにする可能性も。ユーラシア情勢の新局面。[ワシントン発]中国とロシアの間に横たわり、十三世紀にはチンギス・ハンが東欧にまで版図を広げたかつての大帝国、モンゴル。十一月二十一日正午過ぎ、大統領専用機「エアフォースワン」で降り立ったブッシュ米大統領を迎えたのは、数百メートル先すら遮る霧だった。 空港の建物、滑走路に並んだ旧式の航空機……。これらがシルエットとなり、ブッシュ大統領を歓迎する映画のセットのような情感を醸し出していた。米外交史上、この地に足を踏み入れた大統領はブッシュ氏が初めて。大統領より一足早く十月下旬にラムズフェルド国防長官がモンゴル入りしたが、最後の首脳級訪問は一九四四年、ルーズベルト政権のウォレス副大統領にさかのぼる。 だが、ブッシュ大統領はコメントを出すわけでもなく、花束を受け取ると、ローラ夫人と一緒にあわただしく黒塗りのキャデラックに乗り込んだ。それもそのはず、濃霧の正体は旧式の火力発電所や各家庭の石炭ストーブがはき出すスモッグだったのである。 首都ウランバートル市内までリムジンで約二十分。ひどいスモッグに眉を顰めたブッシュ大統領も、沿道の光景を目にするうちに表情を和らげた。数十メートルおきに並び、直立不動の姿勢をとるモンゴル兵、笑顔で手を振る一般市民。痛みを感じるほどの冷気のなか、他国ではみられなかった大歓待の光景が飛び込んできたからだ。

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