クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?
クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

極北の独裁国

徳岡孝夫
執筆者:徳岡孝夫 2014年1月9日
エリア: ロシア 朝鮮半島

 気に入らないヤツは、親戚であろうと誰であろうと、ぶっ殺す。恐怖で足腰が立たなくなっている「叔父さん」を、会議の席から兵士2人で引っ立て、コンクリート製の箱のような刑場に放り込み、人定質問も審理や判決文朗読もあらばこそ、妻の人間らしい「あなた」のひと声さえかけず、(おそらく)機関銃で蜂の巣にしたのだろう。

 そういう死刑執行人と、われわれは、一衣帯水の距離に住んでいる。よく安眠できるよ。よくまあ、のんびり新年の挨拶を交わしたりするよ。

 

 20世紀最大の殺し屋の1人に挙げられるスターリンは、あるときソ連軍将官の昇進予定者リストを部下から渡された。どうせジューコフ元帥かその子分が作ったリストだから、スターリンには異存がない。リストのページを繰る前に、彼は「OK」のシルシに、ぺージの隅にチェックを付けた。すると、そのページに列挙されていたソ連軍将官は、全員が昇進どころか銃殺になったという。

 

 われわれは、スターリンと似た、またはそれ以上の「極北の独裁者」と同じ世代に生きている。

 独裁者にも死ぬ日は来る。1953年、スターリンが死の床に横たわっていたときの模様を、彼の娘スベトラーナが書いたのを読んだ記憶がある。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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