スイス政府みずからが通信大手スイスコムの買収戦略を阻むのはなぜか

2006年1月号
エリア: ヨーロッパ

 買収による事業拡大を戦略の柱に据えようとしていたスイス最大の通信会社スイスコムが、大きくつまずいた。同社の株式の六六%を保有するスイス連邦政府がその買収戦略に待ったをかけたのだ。水面下で進めていたアイルランドの通信大手エールコムの買収は頓挫。デンマークの通信最大手TDCの買収も、競り合っていた買収ファンドの投資グループにさらわれた。 通信業界では国境を越えた合従連衡が当り前になっているが、スイス政府は監督権限があいまいになる外国企業の買収に待ったをかけた。そこには欧州の中心にありながらEU(欧州連合)ではないスイスの逡巡が透けて見える。 スイスコムの国外展開に政府の中で最も強く反対したのがブロハー司法警察大臣。国民党の代表として入閣しているブロハー氏は、EUへの参加や移民の拡充などに強く反対する「右派」の大物として知られる。一方で議会は過半数が国外企業買収を支持していると言われる。 また政府の方針に経営陣は強く反発。取締役会で買収方針を強行実施する構えもみせた。スイス政府は株式を過半数所有するものの、取締役会には代表一人を送り込んでいるに過ぎなかったために起きた事態だった。これに対して政府も議決権を使ってあくまで阻止する姿勢を強調。最終的には経営陣が全員辞職するとの見方も広がった。

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