80時間世界一周 (17)

表現不自由の国イランで意外な「穴場」を発見

執筆者:竹田いさみ 2006年1月号
タグ: イラン 外国人
エリア: 中東

「こんな洒落た場所があったのかー」と、建物に足を一歩踏み入れた瞬間、思わず口から言葉が出た。ここはイランの首都テヘラン市内の高台にあるカフェレストラン。二〇〇二年秋に「スポーツ・リクリエーション・コンプレックス」として開業したが、「看板に偽りあり」だ。たしかに一階にはビリヤードルームがある。しかし二階はテラスカフェ、三階もテラスレストランで、スポーツなどより明らかにカフェレストランが主体である。眺めのよい特等席に座ってコーヒーを啜りながら市内を見下ろすと、テヘランに居ることを忘れてしまう。 というのも、昨晩訪れたイラン料理の民族レストランと比較してしまったからだ。「イランの伝統料理と音楽を堪能して下さい」と、イラン人の知人に強く勧められて、地元で人気のあるレストランに足を運んでみた。たしかに、外国人観光客向けの“民族レストラン”ではなさそうだ。店内は中産階級のイラン人家族で満席状態。だが、食事にいっさい期待してはいけないという直感がはたらく。残念ながら的中してしまった。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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