独裁者のジレンマ(中)チュニジアとエジプトの対照

武内宏樹
執筆者:武内宏樹 2014年1月24日
カテゴリ: 国際 政治
エリア: 中東 北米

 1月14日付のニューヨーク・タイムズ紙に「憲法起草で異なる道を歩むチュニジアとエジプト」(原題は “Arab Neighbors Take Split Paths in Constitutions” )と題する記事が掲載された(http://www.nytimes.com/2014/01/15/world/middleeast/arab-neighbors-take-split-paths-in-constitutions.html)。3年前の1月14日に、チュニジアで20年以上にわたって権力の座にあったベン・アリ大統領が政権を追われ、独裁体制が崩壊した。「ジャスミン革命」とよばれるチュニジアの独裁体制の崩壊は、エジプト、リビア、シリア、イエメンといった他の中東諸国にも飛び火して、「アラブの春」とよばれる一連の「革命」の引き金になったという展開は、まだ記憶に新しいであろう。

 あれから3年が経ち、くしくも同じ1月14日に、チュニジアとエジプトで新憲法をめぐって重要な投票があったのである。しかしながら双方の憲法は全く性格を異にしている。チュニジア議会で可決された新憲法はアラブ世界で最もリベラルなもので、これから民主主義の体制が根付いていくだろうという大きな期待を抱かせる。一方、エジプトの新憲法はこれと対照的である。表向きは国民投票で圧倒的な支持を受けたのであるが、ムバラク政権時代よりさらに強大な権限を軍と警察に与え、結果としてスィースィー氏を頂点とする独裁体制を強化するための手立てとみられている。

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執筆者プロフィール
武内宏樹
武内宏樹 サザンメソジスト大学(SMU)政治学部准教授、同大学タワーセンター政治学研究所サン・アンド・スター日本・東アジアプログラム部長。1973年生れ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程修了、博士(政治学)。UCLA 政治学部講師、スタンフォード大学公共政策プログラム講師を経て、2008年よりSMUアシスタント・プロフェッサーを務め、2014年より現職。著書に『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)、Tax Reform in Rural China: Revenue, Resistance, Authoritarian Rule (ケンブリッジ大学出版会、2014年)。ほかに、International Relations of the Asia-Pacific、Japanese Journal of Political Science、Journal of Chinese Political Science、Journal of Contemporary China、Journal of East Asian Studies、Modern Chinaなどに英語論文を掲載。専門は、中国政治、日本政治、東アジアの国際関係及び政治経済学。
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