クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?
クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

「島」で戦死する日

徳岡孝夫

 大日本帝国の敗戦と、その30年後のベトナム共和国(いわゆる南ベトナム)の敗戦。私は敗戦を2度見た。共に我が人生を覚醒させる出来事だった。

 

 侵略戦争だったと今は言うが、校旗を先頭に神社へ南京陥落の参拝に行った小学2年の私は、子供心にも「これで終わった」と思った。出征している叔父さんも帰って来るだろう。

 だが日本の偉い人々は戦争を続け、それがアメリカとの戦争になり、国民は焼夷弾や原爆を浴びて1度目の敗戦が来た。

 2度目。私は米海兵隊ヘリから海を埋めて沖へ逃げる小舟の大群を見た。ボートピープルだった。負けるって、これか。

 マニラ経由で羽田に帰り、米海軍の旗艦上から英文で打電した自分の記事を探した。それは短く抄訳され、紙面の大半は大型連休の人出のニュースだった。あんなにベトナム人民に同情していたのにと、私は信じられなかった。

 

 先月(1月19日)は、中国がベトナムと戦争して勝った40周年記念日だったが、それは前記2つの戦いよりずっと小さい勝利だった。ただし、いま日本と中国の間で揉めている尖閣の問題に、非常によく似ている。

 ごく自然に、日本の自衛隊員が島を守って戦死するという筋書きを想像せずにいられない。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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