クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

「島」で戦死する日

執筆者:徳岡孝夫 2014年2月5日
エリア: アジア

 大日本帝国の敗戦と、その30年後のベトナム共和国(いわゆる南ベトナム)の敗戦。私は敗戦を2度見た。共に我が人生を覚醒させる出来事だった。

 

 侵略戦争だったと今は言うが、校旗を先頭に神社へ南京陥落の参拝に行った小学2年の私は、子供心にも「これで終わった」と思った。出征している叔父さんも帰って来るだろう。

 だが日本の偉い人々は戦争を続け、それがアメリカとの戦争になり、国民は焼夷弾や原爆を浴びて1度目の敗戦が来た。

 2度目。私は米海兵隊ヘリから海を埋めて沖へ逃げる小舟の大群を見た。ボートピープルだった。負けるって、これか。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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