国際人のための日本古代史 (47)

「魔鏡」は何に使われたのか

執筆者:関裕二 2014年2月10日
タグ: 中国 日本
エリア: アジア
 三角縁神獣鏡のレプリカが光を反射して映し出した裏面の紋様 (C)時事
三角縁神獣鏡のレプリカが光を反射して映し出した裏面の紋様 (C)時事

「魔鏡発見!!」と、久しぶりに考古学の元気なニュースが飛び込んできた。

 3世紀後半から4世紀の東之宮古墳(愛知県犬山市)出土の三角縁神獣鏡を3Dプリンターで再現し、日を当てる実験をしたところ、鏡の裏面を映し出す魔鏡だったことがわかったと、京都国立博物館が1月29日に発表した。

 しかし残念なことに、厳密に言うと、これは魔鏡ではない。鏡の裏に紋様を施した銅鏡なら、ほとんどの鏡で同じ現象をみることは可能だからだ。薄くなるまで磨き込めば、鏡胎の厚さの差から目に見えないくぼみが生まれ、光が収斂し、鏡背面の紋様が映し出される。本物の魔鏡は、仏像やマリア像、十字架など、背面とは異なる紋様が浮かび上がるものなのだ。だから、発表は少しはしゃぎすぎではなかろうか。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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