饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(97)

フランス大使が奔走した日光「クローデル記念館」構想

西川恵
執筆者:西川恵 2006年2月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 フランスのベルナール・ド・モンフェラン駐日大使(六〇)が一月四日、三年余の任期を終え離任した。しかし成田空港から大使が向かったのはパリではなくウラジオストクだった。シベリア鉄道でパリに戻ろうというのである。 この遠回りの帰任には理由がある。二〇〇五年末、大使とインタビューした際、大使は私にこう語った。「シベリア鉄道の旅は幼いときからの夢でね。妻はそんな長旅はいやだというので気楽な一人旅だ。本をしっかり買い込んだから、これを読みながらのんびり帰るよ」。モスクワからは空路だが、それでもモスクワまで六日半の旅だ。 大使が日本に着任したのは〇二年十一月。在任中、日仏両国はイラク戦争、対中武器禁輸解除問題、国際熱核融合実験炉(ITER)誘致をめぐってかつてなく激しくやりあった。その大使が日本での最後の仕事として取り組んだのが「ポール・クローデル記念館」の設立だった。 フランスの外交官だったポール・クローデル(一八六八―一九五五)は詩人、劇作家としても知られ、一九二一年から六年間、駐日大使を務めた。文人大使として日本の各界と幅広い交友を結び、友人だった実業家の渋沢栄一とは日仏会館の設立(一九二四年)に奔走した。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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