官僚がものの見事に矮小化した「特会改革」

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2006年3月号
エリア: 日本

百年に一度の大チャンスが葬り去られつつある。「官の無駄遣い」の根源でありながら国民の目から隠されてきた特別会計。ようやく生まれた全廃の機運も、よってたかって官僚が潰した――。「総理、特別会計は原則全廃ということで臨みたいのですが」 総選挙の歴史的大勝の余韻がまだ残る昨年十月六日、首相官邸。 太田誠一・自民党行政改革本部特別会計改革委員長は、特会問題に切り込もうという小泉首相の覚悟をひざ詰めで確かめた。小泉首相は「それはいい、その意気込みでやってよ」と身を乗り出したという。 特会改革「二〇〇五年冬の陣」は、こうして始まった。 自民党は総選挙で「非効率な特別会計や特定財源制度を聖域なく抜本的に見直す」との公約を掲げた。民主党も特会改革をマニフェストの目玉に据えた。連立相手の公明党も特会には批判的だ。構造改革による財政再建を掲げる小泉政権にとって、政府の「無駄遣い」の病根と指摘されて久しい特会の改革は是が非でも成功させたいテーマだった。 当初、太田氏ら党行革本部は(1)役割を終えた特会は廃止(2)国がやらなくていい特会は独立行政法人化や民間委託(3)類似する事業を抱える特会同士は統廃合――との見直し方針をたて、「31の特会を5や6に減らしたい」との意気込みを漏らした。だが、いきなり冷水を浴びせられる。十月下旬に行革本部が各省庁に対し、削減可能な特会を自主的に挙げるよう求めたが、どの省庁も長々と各特会の意義を語る文書を寄越し、結果はゼロ回答。行革本部は軌道修正を余儀なくされた。十一月には財務相の諮問機関「財政制度等審議会(財政審)」が特会を半減させるべきだとする報告書を出した。それを上回る「三分の一」、つまり「31→10」に最終的な勝敗ラインは下げられた。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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