移民問題から見る米国政治(下)存在感増す「ヒスパニック系」の実態

執筆者:武内宏樹 2014年2月28日
エリア: 中南米 北米

  前回(http://www.fsight.jp/24382)に引き続いて、ピュー研究所のジェフリー・パッセル氏によるサザンメソジスト大学タワーセンター政治学研究所での講演をもとに「移民の国アメリカ」を論じてみよう。今回は移民の動向が今後の米国政治にあたえる影響について考えてみたい。

 

 はじめに押さえておきたいことは、移民人口の増加とともにマイノリティが米国人口に占める割合も増えているという事実である。日本人にとって、「移民」と「マイノリティ」の区別は難しいところであるが、米国社会においては区別されて存在するのが実態である。前回「移民」とは米国外で生まれた米国民と定義されると述べた。これに対して「マイノリティ」は白人か白人でないかが問われる。すなわち、白人でない米国民と定義される。ヨーロッパ、カナダあるいはロシアや東欧の旧共産圏諸国からの移民は、移民であるがマイノリティではない。もともと移民の国であるから、親や祖父母が移民であるという人が多いが、米国で生まれたか否かにかかわらず、白人でない国民がマイノリティである。オバマ大統領の父親は米国生まれではないが、大統領自身は非移民・マイノリティである。

カテゴリ: 社会
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執筆者プロフィール
武内宏樹(たけうちひろき) サザンメソジスト大学(SMU)政治学部准教授、同大学タワーセンター政治学研究所サン・アンド・スター日本・東アジアプログラム部長。1973年生れ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程修了、博士(政治学)。UCLA 政治学部講師、スタンフォード大学公共政策プログラム講師を経て、2008年よりSMUアシスタント・プロフェッサーを務め、2014年より現職。著書に『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)、Tax Reform in Rural China: Revenue, Resistance, Authoritarian Rule (ケンブリッジ大学出版会、2014年)。ほかに、International Relations of the Asia-Pacific、Japanese Journal of Political Science、Journal of Chinese Political Science、Journal of Contemporary China、Journal of East Asian Studies、Modern Chinaなどに英語論文を掲載。専門は、中国政治、日本政治、東アジアの国際関係及び政治経済学。
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