「プーチンのクリミア計画」は実現するか

執筆者:名越健郎 2014年3月3日
エリア: ヨーロッパ

 ロシアによるウクライナ領クリミアへの軍事干渉は、まだ本格化していないとはいえ、ウクライナの分裂や東西の新冷戦につながる無謀な行為だ。プーチン政権には、2008年のグルジア戦争で欧米諸国は結果的に手を出せず、グルジア新政権が親露政策に舵を切ったという「成功体験」が念頭にありそうだ。

 

独立直後から分離志向

 筆者はソ連崩壊直後にクリミアを3度訪れたことがあるが、当時、最大の産業である観光がソ連解体で大打撃を受け、経済は麻痺していた。ガソリンスタンドは長蛇の列で、街中にロシア通貨ルーブルへの交換を求める市民が並び、エネルギー不足でホテルも昼間はお湯が出なかった。黒海艦隊本拠地セバストポリも訪れたが、時代遅れの老朽船ばかりで、部隊の士気も弛緩していた。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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