クリミア併合以降も米ロが“冷戦に戻れない”理由

執筆者:渡部恒雄 2014年3月28日

 ロシアのクリミア半島併合について、米欧は経済制裁を段階的に進め、ロシアへの圧力をつくりだそうとしている。しかし、ロシアの核報復能力を考えれば当然だが、軍事的なオプションはほとんどなく、現在のところ、外交・経済分野での制裁に絞られている。ロシア政府関係者 、および政府やプーチン大統領に近い経済人の米国への渡航禁止措置や資産凍結などだ。また、G8(主要8か国) からロシアを除名するというのが、外交面では最も大きい措置だろう。

 米国内の保守派からは、オバマ政権のロシア政策が、シリアやイラン政策を通してロシアに過度に依存するようになったことを批判する論調が多い。しかし、だからといって、ロシアへの政策オプションとして、あまり過激な提案は少ない。これは、米国が現時点で割くことができる軍事リソースの限界が、共和党にも十分に認識されているからだろう。

 例えば、ブッシュ政権のコンドリーザ・ライス元国務長官が、3月8日付で『ワシントン・ポスト』紙に寄稿した論説がそれを示している。ライスは、ロシアのこれ以上の軍事行動は許されず、ウクライナの領土の一体性は侵害されるものではないという事実をロシア側に認識させることが重要で、そのために、外交的孤立、海外資産の凍結、ロシアの民間のオリガークと呼ばれる財閥リーダーたちの渡航禁止などが適当だと指摘している。だが、軍事オプションについて は、バルト諸国との共同空軍演習や米国駆逐艦の黒海への派遣などを宣言し、同盟国に安心を与えることが重要だと指摘しているにすぎない。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄 わたなべ・つねお 東京財団上席研究員。1963年生れ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで政治学修士号を取得。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政党政治、外交政策、日米関係などの研究に携わる。05年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て現職。著書に『「今のアメリカ」がわかる本』など。
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