台湾「抗議デモ」の本質は反中ではなく「反・馬英九」

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2014年4月1日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中国・台湾

 台湾が中国と結んだサービス貿易協定をめぐる台湾の反対運動は、立法院(国会)を占拠する学生の抗議活動が長引くなか、3月30日には台湾全土で数十万人規模の抗議集会が行われた。馬英九総統は31日、今週木曜日に協定の審議案を立法院に送る考えを示し、学生たちの要求を一部受け入れつつ、最大の要求である審議差し戻しは拒否した。次の焦点は立法院に立てこもる学生の排除に馬英九政権が動くかどうかに移った。

 30日の抗議デモ自体は大いに盛り上がった。ただ、台湾の外に身を置く観察者として大切なのは、中国との協定に対し、台湾でどうしてこれだけの反対運動が起きるか、という点を考えることだ。

 このサービス貿易協定自体が、台湾に本当に不利かどうかは正直よく分からない。この協定によって台湾が中国経済に飲み込まれてしまい、失業者が急増し、空洞化が進むという主張がある。しかし、同時に台湾経済の対中進出にもいっそう道が開かれるわけだから、得るもの、失うもの、両方があるだろう。そういう意味では、台湾の人々が「政策的選択」を議論すればいい話に見える。

 それがこれだけの反対運動に発展したのは、一言で言えば、馬英九総統の求心力と信用が台湾社会で急速に失われていくなか、政権への不満という要素と、経済的に不振が続く台湾の将来への不安という要素が結びつき、矛先がこの協定に向けられたと理解すべきだろう。そこに、潜在的に台湾の人々が抱いている「中国に飲み込まれる」という恐怖感が加わり、雪崩のような運動に発展した、と考えるのが妥当だ。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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