インテリジェンス・ナウ

FBIが「ネタ元」を追及するイラク開戦の口実となった「偽文書」

執筆者:春名幹男 2006年4月号
エリア: 中東 北米

 二十一世紀が明けた二〇〇一年元日の深夜から二日未明、ローマの在イタリア・ニジェール大使館にコソ泥が侵入した。金目の物は盗まれなかったが、公式レターヘッドの書簡紙や大使館の印章がなくなっていた。 ワシントン・ポスト紙は事件の発生を一九九一年としているが、冒頭のように伝えた地元紙レプブリカの調査報道が正しいようだ。これが、四年後ブッシュ政権を揺るがすことになる大事件の第一幕だった。 コソ泥の犯人は不明だが、ニジェール政府の公式書簡紙を使った偽文書の売り込みを図った人物は判明している。ロッコ・マルティノ氏という白髪の情報屋だった。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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