中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(16)

「ハマース政権」の足枷となる「憲章」の強硬姿勢

池内恵
執筆者:池内恵 2006年4月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 パレスチナ自治評議会選挙で圧勝したハマースに対して、二月二十一日にアッバース自治政府大統領から正式に組閣の要請がなされたが、調整は難航している。当面の組閣期限は三週間だったが、二週間延長され、三月二十八日をデッドラインとして交渉が行なわれている。百三十二議席中七十四議席を確保するという、ハマース自身にとってさえ予想外の全面勝利のため、権力配分の落ち着き先は定かでない。 ハマースの国際的地位をめぐる交渉にも進展は見られない。アメリカ、EU(欧州連合)、ロシア、国連のいわゆる「カルテット(四重奏)」がハマースに求めている「イスラエル国家の生存権の承認」「武力闘争の放棄」「過去の和平合意の受け入れ」といった条件は、ハマースにとって容易なものではないからだ。 ハマースの依拠する理念と原則は、一九八八年八月十八日に制定された綱領「ハマース憲章」に明文化されている。「アッラーこそ目的、預言者こそ模範、コーランが憲法であり、手段はジハード(聖戦)である。神の道のための死こそが至高の欲求である」(第八条)と謳い上げるこの憲章は、序文でエジプトのムスリム同胞団の創設者ハサン・バンナーの言を引き、「イスラエルの存在は、イスラームがこれを消滅させるまでしか続かない」とある。また「敵が根こそぎの敗北を蒙り、アッラーの勝利がもたらされるまで」戦うと宣言するなど、「イスラエル国家の生存権の承認」の否定は大前提である。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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