制度設計側が是正すべき一般投資家のリスク過重

執筆者:梅田望夫 2006年5月号
カテゴリ: IT・メディア

 わずか十年前まで、日本では「失敗しても返さなくていいお金」(リスクマネー)で若者たちがベンチャーを起こして冒険することなどできなかった。何かの理由で資金を潤沢に持っていない限り、個人保証を付けて借金しなければ起業することなどできなかったのである。 私は二十代の頃から起業志向が強かった。しかし、個人保証付きの借金をしてまで起業などしたくなかった。ビジネスと家庭生活はきっちりと分けたかった。ビジネスの失敗が原因で、倒産直前に配偶者に債務が及ばないよう離婚を余儀なくされるとか、その後の長い人生、大きな借金を返しながら生きるなんて絶対に嫌だった。九〇年代前半、「失敗しても返さなくていいお金」で起業冒険できる仕組みがあったのは、世界中でシリコンバレーだけだった。私はそれに感動して、この地に移り住んだ。 しかしこの十年、世界がシリコンバレーを学び尽くし、各国が独自にアレンジを加え、起業家主導型経済メカニズムの種が社会に植えつけられた。日本にも「失敗しても返さなくていいお金」で起業冒険できる世界が広がった。これ自体は大いに喜ぶべきことだと思う。 ただ今の日本の状況は、少しそれが行き過ぎてしまっている。制度設計の過渡期の現象として、株式公開があまりにも簡単にできるシステムが出来上がってしまったからだ。東証マザーズ、大証ナスダックジャパン(現ヘラクレス)といった新興市場が設立され、公開しやすさを競ったゆえのことである。

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執筆者プロフィール
梅田望夫 1960年東京都生れ。94年渡米、97年コンサルティング会社ミューズ・アソシエイツを起業。著書に『ウェブ進化論』(ちくま新書)、『ウェブ時代をゆく』(同)、『ウェブ時代 5つの定理』(文藝春秋)、『ウェブ人間論』(共著、新潮新書)など。メジャーリーグの野球、そして将棋の熱烈なファン。
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