ウルムチ爆発事件は「柔性治疆」の転換点か

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2014年5月7日
カテゴリ: 国際 文化・歴史
エリア: 中国・台湾

 中国の新疆ウイグル自治区のウルムチ南駅で起きた爆発事件のニュースをテレビで見ていたら、今年初めの旧正月前に北京に行ったとき、ある有名大学で宗教学を教える大学教授が「このままでは、『維族蜂起』が起きてしまう」と語った危機感あふれる言葉を思い出した。

 主に新疆ウイグル自治区に暮らすおよそ1000万人のウイグル族は中国語で「維吾爾族」、あるいは省略して「維族」と呼ばれる。清朝末期、中国各地にいるムスリムの別の異民族「回族」が起こした大規模反乱を「回族蜂起」と呼ぶのだが、教授は「回族蜂起」に例えてウイグル族をめぐる現状を深く懸念していた。

 習近平国家主席が視察に訪れた直後に公共交通機関を狙ってテロを仕掛けた今回の事件は、天安門広場に車が突っ込んだ事件も併せて考えると、ウイグル族の一部グループが、共産党政権の言うように中国からの分離独立を目指しているのかは別にして、命を賭ける「聖戦」の覚悟を決めた可能性をどうしても想像させてしまう。

 ウルムチ南駅の爆発事件を受け、習近平は「のさばるテロ分子をたたきのめすべきだ」という強烈な言葉で重要指示を発した。今回の一撃は共産党政権にとっても「紅線(レッドライン)」を完全に超えた感がある。これから共産党政権とウイグル族の反体制派との戦いは長く凄惨なものになるだろう。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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