またもやクーデター「タイ政変」の終わりなき混迷

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2014年5月28日

 今回のクーデターを敢行したプラユット陸軍司令官を議長とする国家平和秩序評議会(NCPO)は5月26日、プミポン国王の裁可によって国政の最高機関と認められ、今後はクーデター推進集団としてではなく、国政の最高機関として合法的に振る舞うことになる。

 過去の例に照らして今後の政治日程を考えれば、暫定憲法が公布され、新たに国政の頂点に立ったクーデター推進集団(今回の場合はNCPO)の下に暫定内閣が組織される一方、国内各層から選ばれた勅撰議員で構成された立法議会(或は制憲議会)による新しい「恒久憲法」審議が進められ、総選挙を経て軍政から民政へ移管される。1年前後の時間を要する。

 ということは、順調に進んだとしても、民政移管は早くても来年5月前後。もっとも、総選挙の結果によっては本格政権樹立まで長時間を要することも予想される。それだけに、最短コースを進んだとしても、タイの政治空白は今後1年前後は続くことを覚悟する必要があろう。

 だが、プラユット議長は従来の方式を踏むことなく、文民による暫定内閣を置かない意向といわれ、当面はNCPOが内閣の役割も担うことになるわけだ。

 なぜ文民による暫定内閣を置かないのか。タクシン派対反タクシン派と国内が分裂した状況で、両陣営から受け入れられるうえに、難局を収拾し、国民和解を実現させ、タイを長い政治混乱から立ち直らせうる人材が見当たらないと推測できる。やはりタクシン派対反タクシン派の対立は、抜き差しならぬ段階に立ち至っているということだ。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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