「見えないキズ」でも突き返す顧客に応えて――「高級鋼材」に賭ける鉄鋼業の世界との戦い 1

執筆者:船木春仁 2006年6月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

 世界の鉄鋼業界が動き始めた。今年、粗鋼生産量が世界トップのミタル・スチール(オランダ、イギリス)が、同業二位のアルセロール(ルクセンブルク)に対して総額一八六億ユーロ(約二兆六〇〇〇億円)での買収を提案。四月末現在、アルセロールの株主総会は、買収案拒否の経営陣を支持して攻防は足踏み状態だが、もし買収が実現すれば、グループ全体の粗鋼生産量が日本全体の年間生産量一億一〇〇〇万トンに匹敵する巨大鉄鋼メーカーが誕生する。 インド人のラクシュミ・ミタルが率いるミタルの買収提案の狙いは、自動車や電機、造船向けの「ハイ・ミドルグレード(高級鋼材)分野」を手中に収めることにあると伝えられている。ミタルの主力が建材向けなどの汎用鋼材であるのに対して、アルセロールは、汎用鋼材と高級鋼材の両方を手がけ、ヨーロッパに進出している日系自動車メーカーにも新日本製鉄(新日鉄)と提携して鋼板を供給している。 ミタルが狙う高級鋼材。それこそが生産能力の拡大を背景にして輸出攻勢をかけようとする中国への対抗策の本命とされるものだ。そして高級鋼材で世界をリードするのが日本の鉄鋼メーカーである。ミタルが、大が大を飲む買収提案で世界の鉄鋼業界の再編に手をつけた以上、日本メーカーが標的にならないとは誰にも断言できない。

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