「外交的仲介機能」を再建するメルケル独首相の実力と不安

執筆者:佐瀬昌盛 2006年7月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

昨年、二カ月以上も続いた混乱の末に大連立政権を率いることになったメルケル首相。当初の観測とは裏腹に、堅実な政権運営を行ない、特に外交ではしたたかな手腕を発揮している。果たして「欧州の大病人」ドイツの治療はできるのか。 ドイツでアンゲラ・メルケル新首相の下、CDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)とSPD(社会民主党)による大連立政権が発足してから半年あまりが経過した。世論調査では新首相の人気が異常に高い。二月、三月ごろに連発された調査では、支持が八〇%近くに達したこともあった。昨年九月総選挙での大苦戦や、二カ月以上もごたついた連立相手探しと大連立協定交渉はまるで嘘みたいで、有権者たちはこの女性指導者の足を引っぱったことなぞ、いまでは忘れたがっているように思える。なにゆえのこの逆転か。 まず心理的要因がある。シュレーダー前首相との人柄の対照性が好感されている。前首相はテレビ向けの能弁、挙動も派手、人気は低いが選挙には滅法強く、率直に言ってアクの強い政治家だった。昨秋の総選挙でも開票集計終了の瞬間、「私が勝った」とガッツポーズ。誰もが息を呑んだ。かと思うと、大連立発足で政界を去り、在任最末期にプーチン大統領と合意していたバルト海パイプラインを扱う露企業の代表役員に就任。そのドライな行動に自党も世間も唖然とした。メルケル首相にはできない芸当だ。

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執筆者プロフィール
佐瀬昌盛 防衛大学校名誉教授。1934年生れ。東京大学大学院修了。成蹊大学助教授、防衛大学校教授、拓殖大学海外事情研究所所長などを歴任。『NATO―21世紀からの世界戦略』(文春新書)、『集団的自衛権―論争のために』(PHP新書)など著書多数。
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