日本の資本主義を後戻りさせた村上世彰の皮肉

執筆者:八重山洋 2006年7月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

もともと改革者ではなかったのか。それとも大儲けが村上を変えたのか。驕りが理念を吹き飛ばし、“偶像”は失墜した。 締め切りに追われながら、ふと“彼”と交わした昔のやり取りを思い出していた。「株式取引を大衆化させた堀江(貴文・ライブドア前社長)は勲章モノだね」 一年前、ニッポン放送株をめぐるフジテレビとの買収合戦で、ライブドアが勝利した時のこと。筆者が「お茶の間にM&A(企業の合併・買収)やクラウン・ジュエル(買収対象の企業の最も魅力的な部門)といった経済用語が普及した」と水を向けると、“彼”は口から泡を飛ばしてまくし立てた。「本当にこの国のために良かった。快挙だよ」。 その“彼”――村上ファンドを率いる村上世彰が六月五日、証券取引法が禁止するインサイダー取引の容疑で逮捕された。ライブドアの大量買い付けを事前に知りつつ、ニッポン放送株を売買したという咎である。ニッポン放送株の買い占めで知られるようになった時間外取引の手法を堀江に教えたのは村上だ。むしろ村上こそが買収合戦の“立役者”だったのに、「勲章」どころか連れ立って塀の中に落ちてしまった。 フジテレビがニッポン放送に対するTOB(株式の公開買い付け)を始めていた昨年初め、村上は「他の奴に(保有株を)売ったら世間はどう思うかな」とつぶやいていた。楽天の三木谷浩史社長もニッポン放送株を欲しがっていたが、三木谷は世間の反応も気にしていた。「自分より頭も胆力も劣る奴が新世代の旗手として評価されているのか」。村上は三木谷を軽蔑し、結局、“子分”として可愛がっていた堀江に引き取らせようとした。資金もコンプライアンス(法令遵守)の意思もないライブドアを仲間にひき入れたことで、綻びの端緒が生まれた。

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