7月17日夕、ウクライナ東部上空でアムステルダム発クアラルンプール行きのマレーシア航空機(MH17便)が撃墜され、乗客乗員合わせて298人が犠牲になった。「誰」によって、なんの目的で撃墜されたのか。事件の根底にウクライナ問題に絡んだアメリカ、ロシアなどの超大国間の錯綜する利害が認められるだけに、事件発生直後の記者会見の席でマレーシアのナジブ首相が沈痛な面持ちで「罪を犯した者は裁きを受けなければならない」と強く訴えはしたものの、被害国ながら、マレーシアが自らの判断で真相究明に取り組むことは困難であろう。

 とはいえマレーシア国内では、「経営再建に急ぐあまり、安全を蔑ろにしたのではないのか」と、事件の背景にマレーシア航空の経営姿勢を指摘する声もある。燃料と経費を切り詰めるため、最短距離の飛行を狙って敢えて紛争地域上空を飛行したというのだ。

 こういった批判に対し、マレーシアの運輸大臣は、(1)ウクライナ上空飛行ルートはICAO(国際民間航空機関)とIATA(国際航空運送協会)から正式に承認されているゆえに、安全性に問題はない。(2)マレーシア航空は過去数10年に亘って同ルートを飛行しているだけでなく、他社も利用している。(3)アジア太平洋地区の16カ国のうち15カ国の航空会社が引き続き同ルートを飛行し、かつマレーシアは同ルートが飛行困難であるとの連絡を受けてはいない――とした後、「他社がなんらかの要因で飛行ルートを変更したとしても、ICAOが安全と定めた当該ルートを変更することはない」と言明し、MH17便が何らかの理由で敢えてウクライナ東部の紛争地帯上空を飛行したとの説を強く否定した。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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