ミャンマーが「中国による鉄道建設」を白紙に

樋泉克夫

 どうやらミャンマーは、中国を相手に強力なカードを切ったようだ。

 7月22日に伝えられたところでは、ミャンマー鉄道運輸省当局者が、(1)2011年に中国との間で締結された鉄道建設に関する協定に記された3年の期限が過ぎても、中国側に工事着工の動きが見られない(2)当該鉄道建設にミャンマー国民の一部、社会組織、いくつかの政党が賛成していない――を理由に挙げ、「当該協定を実施しないことを決定した」ことを明らかにした。

 じつは2011年、中国鉄路工程総公司とミャンマー鉄道運輸省の間で、(1)3年以内の着工(2)総工費200億米ドル(3)資金の大半は中国側が負担(4)当該鉄道に関する50年間の運営権を中国側が持つ――を柱とする協定を結んでいた。清朝末期以降の西欧諸列強の中国進出の柱が鉄道建設と運営権の掌握にあった点を考えれば、ミャンマーのど真ん中を西南から東北に貫くチャオピユー・昆明間の鉄道が完成した暁には、ミャンマーは50年間、事実上は中国から植民地同様の扱いを受けることになったはず。

 中国では「中国鉄路工程総公司は海外巨大プロジェクトの1つを失うことになるが、損害は限定的なものに止まる」と比較的冷静に受け取る声も聞かれるようだが、問題は中国鉄路工程総公司の経営にあるわけではない。今回のミャンマーの措置によって、中国が東南アジア大陸部で進めて来た鉄道ネットワーク構築計画におおきな狂いが生じかねないことだろう。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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