【ブックハンティング】英国人ストラテジストが描くポストバブルの「日本の肖像」

吉崎達彦
執筆者:吉崎達彦 2006年8月号

 優れたミステリー小説の条件とは何だろう。以下の七条件は、評者が今ここで勝手にひねくりだしたものだが、たぶん大方の読者からは賛同をいただけるのではないかと思う。(1)文体。独創的なものである必要はないが、少なくとも冒頭から結末までトーンが一貫していなければならない。(2)名文句。著者の人生観を反映した気の利いたセリフやナレーションが欲しい。例:「陰謀というものは、失敗すればスキャンダルになるが、成功すれば偶然の出来事になる」。(3)登場人物。できればヒーローは高村薫のごとく、ヒロインは桐野夏生のごとくありたい。ちょっとだけしか登場しない脇役にも手間をかけること。(4)筋立て。意表をつく展開が望ましいのはもちろんだが、結末はある程度読者の想定の範囲内であった方がいい。(5)舞台。関心は高くても、普通の人があまり知らない世界が良い。「ハゲタカ外資に食い荒らされるバブル崩壊後の金融界」などは格好の条件といえる。(6)小道具。「外国人が集まる六本木のデートクラブ」や「花粉症に苦しむヤクザ」といった今風の要素を加えることで、物語に奥行きが出る。(7)モチーフ。著者が作品によって描こうと意図したもの。ただしこの部分は、作品の成功不成功にとってさほど重要ではない。

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執筆者プロフィール
吉崎達彦
吉崎達彦 双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年(昭和35年)富山市生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1984年日商岩井(現双日)に入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会調査役などを経て現職。新聞・経済誌・週刊誌等への執筆の他、「サンデープロジェクト」等TVでも活躍。また、自身のホームページ「溜池通信」では、アメリカを中心に世界の政治経済について鋭く分析したレポートを配信中。著書に『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)、『1985年』(新潮新書)など、共著に『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社)がある。
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