クリミアへの旅(2)外国に行けない旅券

国末憲人
執筆者:国末憲人 2014年7月29日
エリア: ヨーロッパ ロシア

 新たな独立国が生まれたことはある。国家間の交渉で国境が動いたこともある。だが、力ずくで国境を変更させられた例は、少なくとも近年の欧州には見られない。

 ロシアによるウクライナ・クリミア半島の併合がもたらした衝撃は、そこにある。もちろん、この併合は住民投票の結果であり、「住民投票で示された民意にロシアが従った」との体裁を、形式上は取っていた。一方で、ロシアの描いたシナリオにすべてが沿っていたのも、否定しがたい。

 今はまだ、ウクライナ東部ドンバス地方で紛争が続いているから余裕もないだろうが、これが落ち着くと、ウクライナ政府は黙っていないだろう。ロシアに対し、領土返還を求めるに違いない。

 

住民に広がる疑心暗鬼

 併合後のクリミア半島はどうなっているのか。様々な制度をウクライナ流からロシア流に変更する「ロシア化」が起きていると推測できるが、実態がよくわからない。プーチン政権のメディア支配が徹底し、都合の悪い情報が外部に漏れなくなっているからだ。「住民の圧倒的支持を得てロシアに編入され、みんな満足している」などという 話ばかりを、ロシアメディアは流している。

 実態を調べている人に、首都キエフで会った。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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