クリミアへの旅(2)外国に行けない旅券

執筆者:国末憲人 2014年7月29日
エリア: ヨーロッパ

 新たな独立国が生まれたことはある。国家間の交渉で国境が動いたこともある。だが、力ずくで国境を変更させられた例は、少なくとも近年の欧州には見られない。

 ロシアによるウクライナ・クリミア半島の併合がもたらした衝撃は、そこにある。もちろん、この併合は住民投票の結果であり、「住民投票で示された民意にロシアが従った」との体裁を、形式上は取っていた。一方で、ロシアの描いたシナリオにすべてが沿っていたのも、否定しがたい。

 今はまだ、ウクライナ東部ドンバス地方で紛争が続いているから余裕もないだろうが、これが落ち着くと、ウクライナ政府は黙っていないだろう。ロシアに対し、領土返還を求めるに違いない。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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