「ある華人の回想」から浮かぶカンボジアと中国「複雑微妙」な関係

執筆者:樋泉克夫 2014年8月25日
エリア: アジア

 一時は資金不足や内外の政治的事情から維持が危ぶまれていた、自国民を標的としたポル・ポト派の“国家犯罪”に対する裁判が 、どうやらカンボジアでは続いていたようだ。8月7日、首都プノンペンの特別法廷は、ポル・ポト政権で人民代表議会議長だったヌオン・チア(88歳)と、国家幹部会議長だったキュー・サムファン(83歳)の両被告を裁いた。

 裁判における最大の争点は、1975年から77年にかけてポル・ポト政権が実施した都市住民の農村部への強制移住によって、200万人超ともいわれる人々が餓死・病死した事実である。被告側は、自国民に対するジェノサイドとでも呼ぶべき蛮行を、「米軍の爆撃情報があり、避難させるためだった」と抗弁したが、裁判官は受け入れず、求刑通りに最高刑の終身刑を申し渡した。判決を不服とする被告側弁護団は、2審制に従って控訴している。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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